起床は10時過ぎと若干遅め。日本時間だと11時、結構遅めな気がしてきた。さすがに、ここ2日間の疲れがガツンと体に影響を与えたのだろうか。さて、朝食兼昼食を取るべく、近場のミーファン屋さんに宿のオーナーに連れて行ってもらった。宿の近くの路地に店を構える現地人御用達のお店だ。観光客向けでないため、値段も量もトッピングも現地テイスト。これがまた美味しい。つるりと喉を通る麺は陽朔で食したそれとはまた違う。桂林の麺はほろりと柔らかいんだよね。店にもよるのかもしれないけれど、同じ料理で違う味を楽しめるのはおもしろい。土地柄を感じ取ることができるから。
店先で解体される豚やカゴの中で騒ぐ鶏を横目に宿に戻る。出発時間が近づいてきた。3泊4日という短い桂林滞在だったにも拘らず主要な観光ができ、自分たちのペースで街中を歩けたのは個人旅行冥利に尽きる。加えてノープランだったしね。川下りさえできればいいや、そんな考えしかもってなかったのに、まさかのボリュームたっぷりの旅。だから、やめられない。
荷物をまとめ宿のみんなにお別れの挨拶をし玄関のドアを開ける。広一くんはワンワン泣いていた。やはり、別れはつらいんだね。こちらも、ちょっとばかしシンミリとしてしまった。ただ、宿がある限り再訪の可能性は十分にあり得る。桂林でひとつやり残したこともあるし、チャンスがあればもう一度訪れたいと思っている。日本から1日で行けちゃう距離だし、思っていた以上に近い存在だから。
搭乗手続き後、空港の本屋さんで記念に陽朔のミニフォト集を購入し、乗り込む時間を待った。そういえば、桂林に来て初めて日本人を見た、空港で。これは予想外だった。桂林や陽朔の街中でひとりくらいは会えるだろうと思っていたのだが結局会えなかった。おそらく、僕らがツアーとは全く異なるルートで旅したからだろう。そうこうしているうちに搭乗時間、約2時間のフライトを経て、15時30分頃に上海到着だ。
ハプニング無く上海虹橋空港に入った。二度目の上海、3日ぶり。敢えて虹橋空港を選んだのは、何となく! ではなく、予約しているホテルに近いから。空港でさくりとタクシーを捕まえ、ホテルへ向かう。そう、ホテルなんだよ、ホテル。一部屋日本円で6,000円弱。ふたりで行っているから、ひとり当たり3,000円くらい。上海だし、少しだけ豪華にいこうと思って取っていたんだけど、想像を絶する良ホテルだった。もうね、バックパック旅行者にまったくそぐわない。大きなスーツケースでがらがら行く旅行者にぴたりとはまりそう。部屋も期待を裏切らない良さだった。これでこんなに安くていいの、っていう。
ホテルでデポジットを取られるときに手持ちすべてのクレジットカードが使えないハプニングに見舞われたが、何とか攻略し、18時過ぎに身軽な格好で淮海中路に降り立つことができた。街並は近代的、僕らにとってホームといえる風景だった。高層ビルが軒を連ね、カフェが点在する。とりあえず、これまでのアウェイ感から脱するべくスタバに入ることにした。値段はほとんど変わらない。絶対に富裕層か観光客しか入らないんだろうな、そんな気がした。コーヒーを飲みスタバを後にする。その後、ZARAで靴とシャツを購入した。今回の旅に履いてきた靴は当初から脱ぎ捨てるつもりだった。ここでやっとその目標を果たせた。一安心だ。
目的地である新天地に到着した。フランスの路地が模されており、中国とは思えない雰囲気を醸し出していた。よりいっそう落ち着くのは、やはりこのような風景に馴染んだ土地に住んでいるからだろう。アスファルトがあって当たり前の生活、世界各国の街並を再現した場所が東京には存在する。歩けば歩くほど中国という意識が薄れていく。歩いている人々に西洋人が多分に含まれているからだろう。
新天地の次は外灘である。ぶらりと外灘へ向けて歩を進め、船に乗って浦東へ行こうと企てていた。観光客にしつこく付きまとう客引きをあしらいつつ、船着き場へ向かった。しかし! ここで思わぬ事態が訪れる。上海万博に伴い、外灘から浦東へ行く手段が途絶えていたのだ。大々的な河川工事。もしかしたら、方法はあったのかもしれない。しかし、その時は別の方法なんて想定しておらず、とりあえず途方に暮れるだけであった。気を落ち着かせるため、夕食を味千ラーメンで取ることにした。熊本出身味千ラーメン! 桂林に引き続き、上海でも熊本パワーを見ることになろうとは……。食後の時刻は22時を回ろうとしている。上海が眠りにつく時間も近い、一か八か地下鉄に乗って浦東方面へ行ってみたが、やはりこちら側も工事だらけで何の成果も得られなかった。少々悔やみつつも、終電ぎりぎりで外灘方面に渡り宿に戻った。
今日は少しだけ想定外の事態に巻き込まれたが、無事に桂林から上海に戻ってこれたし、とりあえず計画は順調に進んだ。明日は蘇州に向かう。ホテルにて就寝前に決めた。行き当たりばったりだが、たいてい成功するのがいつものパターン。気持ちの良いベッドに飲み込まれぬよう、しっかりと目覚ましをセットして眠りに落ちた。