ここ最近映画館に足を運べていないこともあり、「映画館に行きたい。映画館に行きたい」という思いは日に日に増していた。そんな折、ジョージ・A・ロメロが久々に放つゾンビ映画『ランド・オブ・ザ・デッド』の公開を耳にした。「映画館に行きたい」という思いは頂点に達し、足は自然と映画館に向かっていた。そういうわけで、京成ローザ10で前述の映画を鑑賞した。初めて入る映画館。それだけで内心ワクワクだった。
さて、ここからは軽くネタバレになると思うので、これから映画館に行こうと考えている人、後々DVD(もしくはVHS)で観ようと思っている人は読まないほうが幸せかもしれない。
ひとつの打ち上げ花火が空に舞った。ゾンビたちはそれを懐かしむかのように眺めつづけていた。
そんなオープニングで始まったこの映画。世界はゾンビ帝国と化していた。人間はというと、”基地”を作りゾンビの進入を徹底的に潰していた。”基地”の周りには川が流れており、橋を渡る以外にこの基地に入ることはできなかった。また、”基地”には高層ビルが立ち並び、コミューンが形成されている。そして、その高層ビル群に隠れたところにスラムが広がっていた。そんなスラムの見世物小屋ではゾンビをネタにショウが行われていた。噛まれればゾンビになってしまうという恐怖心と好奇心の狭間で催し物が繰り広げられる。人間はゾンビをも生きる餌にしてしまっていた。
ひとり(1匹?)の黒人ゾンビが立ち上がる。「こいつは生きている人間か?」と思わせる風貌の彼は、道具を用いることを憶えており、学習能力があった。また、仲間意識もあり、彼の近くに立っていたゾンビが人間の殺戮(?)によって倒れたとき、初めてその人間の住む”基地”に憎しみを持った。彼を先頭に数え切れないゾンビが一歩一歩、その”基地”に向かって歩みを進める。”人間を食べる”ことを目的としているゾンビの中で、”人間に復讐をする”ことを目的としているそれはとても異質なものであった。
そんな感じで物語は進んでいく。”基地”の周りの川もよくよく考えると”死んでいる”ゾンビからしたら、障害にすらなりえない。だって、溺れ死なないのだから……。川底を歩くだけで難なく”基地”にたどりつけてしまう。こうして、権力の象徴とも云える”高層ビル”はゾンビの襲来によりあっけなく陥落してしまう。さらに、今まで人間を守っていたバリケードや川が逆に逃げ場を失わせる起因になってしまい、本末転倒な結末に。その結果、人間はどんどんゾンビに襲われていっちゃう。しかも無力。そして、結構グロいやられ方。これでPG12は低くないかなあとも思ったりした。そんなシーンで印象的だったのは、人間の反撃によって苦しんでいるゾンビを、知能を持った黒人ゾンビが殺す場面。行為は残酷だが、仲間意識の高さを窺い知れた。
クライマックス。黒人ゾンビを筆頭にゾンビたちは、今居るべき場所を求めて廃墟と化した”基地”を闊歩している。一方、生き延びた人間たちも同様に、今居るべき場所を求めて移動を開始する。こうやってみてみると、どっちがゾンビかわからない。上記の文章の”ゾンビ”と”人間”を入れ替えても十分に意味が通る。さて、どっちが残酷かな?
しかし、この作品の背景はおもしろいなあ。さあ、”基地”を”どこぞの大国家”に置き換えてみよう。
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