テアトル新宿で『オーバー・フェンス』を観てきた

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テアトル新宿 > スクリーン1 > 座席E-13 にて、21:00の回を鑑賞。

佐藤泰志原作の函館三部作のラストを飾るこの作品。1作目の『海炭市叙景』は映画館(ユーロスペース)で、2作目の『そこのみにて光輝く』は自宅で、そして最後はやはり映画館での鑑賞。東京テアトル創立70周年記念作品となっている。

山下敦弘監督の作品で、最近だと映画ではなくドラマの『山田孝之の東京都北区赤羽』が記憶に新しい。オープニングテーマがスチャダラパーの『中庸平凡パンチ』ってことで見始めたのだけれど、気付けばその世界観にどっぷり…。というのはまた別の話。

この映画のメインキャストがオダギリジョー&蒼井優ということで華やかな印象を持つ。物語的には前二作同様、静かに進行していくと思っていたが、それは少し裏切られた。ぬるりぬるりと流れるように物語がすすみ、イベントが点々と埋め込まれている。とても観やすい映画だった。

上辺はヘラヘラしながら愛想よく、しかし時折見せる狂気に気付いている白岩(オダギリジョー)と、躁うつ状態とそれを客観的に見つめる聡(蒼井優)、このふたりの世界観が確立しており、さらに脇を固める“職業訓練校”の個性的な面々。旨味が増している。

職業訓練校の建築B班のメンバーは、それぞれがとくに自分の口から明かすことのない過去を背負った上で訓練を受けに来ている。白岩も含めて、その過去が暴かれようとした瞬間/脳裏に強く浮かんだ瞬間に、今の日常が崩れてしまう(崩れかけてしまう)。だからこそ、みな深入りせず、お互いが接し合っている。この接し方と対極をなすのが、前述の白岩と聡の掛け合いだ。職業訓練校のメンバーの代島(松田翔太)もふたりの世界観に入り込む余地を全く見いだせないでいた。

詳しくは述べないが、物語の最後のソフトボール大会においてオーバー・フェンスはおとずれる。文字通り柵越えである。この柵は物理的な要素だけでなく、この柵越えを見ていた人たちの精神的な柵を越えたことにも繋がると感じた。“今を変えられるかもしれない”。それが実現すること、すなわち“オーバー・フェンス”ではないのかなぁ、なんて。

山下敦弘監督のサイン

評点: (7.5/10)