ヒューマントラストシネマ有楽町で『アスファルト』を観てきた

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ヒューマントラストシネマ有楽町 > スクリーン2 > 座席D-4 にて、20:10の回を鑑賞。

イザベル・ユペールが写るポスターがとても温かみのある雰囲気を醸し出している。しかし、タイトルは『アスファルト』。似つかわしくない表題だ。

舞台は、フランス郊外の団地;アパート(たぶん11階建て)。日本でイメージすると市営住宅が近いのではないか。周りにはコンビニもなく、ただ住むための集合体。そんなアパートで静かに動き出す非日常の出来事。男女ペアの3組、計6人の人間模様が描かれている映画となっている。

ハリウッドよろしくド派手なカメラワークは皆無なこの映画、流れ行く時間を点で切り取りつなぎ合わせていく。3組の全く交差しない物語がアパートを舞台として、パラパラ漫画のようにテンポよく展開されていく。

各々の物語の序盤は、閉じた世界となっている。人が集合して成り立っているアパートではあるが、必要伝達事項を除いて他干渉はほぼ感じられない。日本のマンション環境を想像してもらえれば分かりやすいはず。そんな閉じた世界において、あるアパートの住人は夜勤の看護師に心惹かれ、あるアパートの住人は新しく引っ越してきた妙齢の女優の存在に惹かれ、あるアパートの住人は着陸場所を誤って迷い込んだNASAの宇宙飛行士の心優しさに惹かれる。

元いたアパートの住人同様、彼(彼女)らと非日常的な出会い方をした面々も、当初は心を閉ざしていた。しかし、それは徐々に氷解していく。序盤の暗い“静”ではあるが、後半にかけての“静”の中に現れる一瞬の“動”によって、開いていく世界を垣間見ることができる。冒頭で記した、イザベル・ユペール演じるジャンヌ・メイヤーのシーンが最も象徴的だろう。

この映画を全体を通して、「きぃ~きぃ~」という金属の擦れるような音が時折現れる。ある者は「子供の叫び声だ」と言い、ある者は「悪魔か、幽霊だ」と言う。またある者は「サーカスから逃げ出したトラの鳴き声だ」と言う。三者三様てんでバラバラ。また各々がイメージする“音”はあまりにも非日常だ。今まさにそれぞれが非日常を繰り広げているのに、みな毎日聞いているこの音(正体は金属製のコンテナの扉が風で開いたり閉まったりする音)は深く探ろうとしない。ここにタイトルの意味を見た気がした。

評点: (8.5/10)